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ねりま演劇を観る会「ホブソンの婿選び」

2012年07月30日
ねりま演劇を観る会で、仲代達矢さん率いる「無名塾」の演劇を観てきました。

タイトルは、「Hobson's Choise~ホブソンの婿選び」。Hobson's Choiseは「ホブソンの選択」という意味ですが、日本語サブタイトルの「婿選び」よりこちらの方が内容に合っていると思います。
img_1207.jpg

舞台は19世紀末のイギリス。大酒飲みのホブソンが営む靴屋は目抜き通りにあって、上流階級の顧客を持つ一流店。床下の工房では2人の職人が靴を手作りしています。

ホブソンは妻に先立たれたやもめで頑固者で暴君。3人の年頃の娘たちの”口ごたえ”に手を焼いた挙げ句、「嫁に出す!」という結論に至るが、長女のマギーに対しては行き遅れだから残れと宣告します。

優秀な売り子であり経理にも明るいしっかり者のマギーと、流行のドレスを着て街をチャラチャラ歩きたい2人の妹との対比が面白いです。

妹たちにはすでにいい人がいて、父の「結婚させる」宣言に小躍りします。
でも、飲み仲間に「嫁に出すには持参金がいる」と言われたホブソン、「やっぱやーめた!!」と宣言撤回。娘たちは失望しますが、賢いマギーには誰にも思いつかない超ウルトラ級の秘策があったのです。

切れ者で男勝りのマギーが結婚相手に選んだのは、なんと床下の職人ウィリー。
ウィリーは字が読めず、あんまり頭の回転もよろしくない、なんともおどおどした小心者。だけど靴づくりにかけては一流の腕前を持ち、上流階級の奥様がわざわざウィリーに会いに来るほどなのです。

そんなウィリーに目をつけたマギーは、「もう下宿屋の娘と婚約している」と激しく拒絶されても臆せずひるまず、強引に言い寄ります。

マギーの秘策とは、ウィリーを店から引き抜いて独立させ、2人で店を持つというもの。売るのも計算も得意なマギーと、素晴らしい靴を作るウィリー。最高の組み合わせじゃないの~!!

と勝手に陶酔し、明るい未来を戸惑うウィリーの前に展開してみせます。
ウィリーはパニックに陥りながらも、「だだだだだだって俺、あんたのこと愛してない!」と、そこのとこだけはキチンと主張しますが、強引に押し切られて結婚することになってしまいます。

女性が無理矢理結婚させられる話は悲劇なのに、男が好きでもない女性と結婚させられる話はどうしてこうも面白いのでしょう。

秀逸なのは結婚式の夜、つまり初夜のシーン。結婚式の後だというのに、ちゃんとウィリーに読み書きの練習をさせるマギー。そしてウィリーも初夜の緊張感を感じさせず素直に書き取りを練習します。

マギーは先に別室のベッドへ。
やがてウィリーは書き取りを終え、マギーの方を気にしながらもそのままソファで眠る体勢をとります。

どうするマギー!
なかなか現れない夫を待ちながら、このまま初夜をすっぽかされてしまうのか!?

と、妙な緊張が走ります。

しかし、心配ご無用。男より男勝りなマギーはさっと戻ってくるとウィリーの耳をひっぱり、強引にベッドルームに連れ込んでしまいます。

ここで観客から爆笑と拍手が起こりました。
心配なんかして損した! さすがはマギーだぜっ! ブラボー!!
という、声にならない喝采が拍手に込められているように感じました。 

意に染まない結婚をさせられた新妻がベッドルームに連れこまれるというのは悲劇ですが、男が好きでもない女性と・・・以下略。

2人の妹たちも、ホブソンから金を巻き上げて持参金にするというマギーのこれまた見事な計略により、めでたく好きな男性と結婚することができました。

しかし、マギーとウィリーが去ったホブソン靴店は、すっかり閑古鳥の鳴く店に。
上級階級の奥様をはじめとする顧客たちはウィリーの作る靴を買い求め、夫妻の店は条件もよくないのに大繁盛したのでした。

そして、一年後。
病気をしてすっかり弱気になったホブソンを、マギーが見舞います。医者の強い勧めもあり、ホブソンはマギーに「戻ってきて面倒を見てくれ」と頼みます。

マギーのあのギラついた勝ち気さは影を潜め、「夫に相談してみないと」などと普通の人妻のようにしおらしいことを言います。そこへウィリー登場。

マギーによって教育を施され、経営者としての自信をみなぎらせたウィリーは強気の言動でホブソンを圧倒します。そのあまりの変貌ぶりにホブソンは自失呆然。
ハナからウィリーを馬鹿にしていた妹たちも、お口あんぐり、目が点!!(゚〇゚;)

ここらへんの2人の変貌ぶりはお見事!! の一言です。
最初は小心者で馬鹿っぽかったウィリーが、歩き方もしゃべり方も「やり手の経営者」へと成長し、マギーに堂々と指図するまでになっていたのですから。

一方、マギーも「常に夫のすることに従います」的なムードを発散する貞淑な妻に変身。少し化粧が濃くなって美しくなったけれども、慎ましいドレスに身を包んでいます。
商社マンや弁護士と結婚して「上流の仲間入り」を果たした華美な妹たちとは、見事なまでに一線を画しています。
お店が繁盛して暮らし向きは豊かになったはずなのに、決して派手なドレスを着ないところがマギーらしくてステキです。

ウィリーはマギーともども戻ってホブソンと暮らすことを了承し、店の共同経営者となります。

でも、実はネ・・・。
てな軽いオチが最後にあるのですが、まあお芝居を観ていればだいたい察しはつきます。
ウィリー演じる松崎謙二さんの演技力にも拍手を送りたいです。

もちろんハッピーエンドで、めでたしめでたし。

ホブソンはきっと今後も手の焼ける頑固オヤジのままなんだろうな。ドクターに止められたから大好きな酒は断つことは断つんだけど、時々は盗み飲みかなんかして、マギーに怒られて。
ウィリーもかつての「だんな」に頭が上がらないながらも実直に接し、3人はいい家族になるんだろうな。
マギーに子どもはできるかな? できるといいな。

などと、観終わった後も思わず第3部? を想像してしまう楽しい余韻が残るお芝居でした。

ここで、最初に「ホブソンの婿選び」というタイトルより「ホブソンの選択」の方が内容に合っていると書いた理由がおわかりでしょう。

実際のところ、ホブソンは「婿選び」には携わっていませんでしたね。
娘たちに反旗を翻されて寂しい一人暮らしになった末、詫びを入れてウィリー夫妻に同居を頼むという『選択』に至ったことを表しているのではないかと、わたしは思うのです。

ところで、ホブソンは店の経営の面でも生活の面でも最初からマギーに頼っていて、「お前は行き遅れで、もう結婚できない」と宣告したのも、ゆくゆくは店を任せてオレの面倒もみてもらいたいという気持ちから『選択』した非情な宣言だったのではないでしょうか。

チャラチャラした下の二人には初めから期待しておらず、マギーの経営の才覚を見込んでマギーこそオレのすべてを託せる娘だ!という確信があったのかもしれません。

その意味では、最初の『選択』通りの結論に落ち着く『選択』をしたホブソン。ちょっと遠回りしたけど、どちらも望みどおりの人生の『選択』を果たしたというわけです。
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